昭和生まれのサンタクロース
少し気持ちと心臓が落ち着いてきたおばあさん。

鞄からスマホを取り出した。

「写真、お願いしてもいいですか?」

「どこを押せばいいんだ?」

「ここの真ん中の丸いところです。」

「分かった。」

スマホを扱ったことがおじいさんは不安そうに受け取った。

「いくぞ。」

「はい。」

平成史上最高の笑顔。

Loveウォールのピンク光に当てられ通常以上の輝きを放つおばあさんの薬指。

カメラのシャッター音と同時に、おじいさんの顔にも大輪の花が。

「これでいいか?」

「はい、ありがとうございます。」

写真を確認したおばあさんは、そのままスマホに指を走らせる。

「それはなんだ?」

「写真を載せてるんです。」

ただでさえスマホについての知識ゼロのおじいさん、全く意味が分かってないようだ。

そんな心の中も当然分かっているおばあさん。

投稿作業を完了後、補足説明を始める。

「私たちの知人もこの写真が見れるようになるんです。」

「へー、すごいなー。」

若干のハテナは残るもののなんとか理解したおじいさんには次の疑問が。

「この数字はなんだ?」

「これは私たちの愛を見守ってくれている人の数ですよ。」

雰囲気に当てられてか、ちょっとロマンチックな表現をするおばあさん。

「そうか。」

と言ってる間にイイネの数が2桁に。

おそらく娘や孫が反応してくれたのだろう。

「こんなに沢山の人に見守ってもらえてるなら大切にしないとな。」

あえて誰かは言わない。言う必要がないから。

「そうよ。一生よろしくお願いします。」

幸せが二人の周りを漂い覆う。

そんな仲睦まじい夫婦を少し離れたところからカメラに収めた先程の男。

実は彼が著名なカメラマンで、その写真がSNSに拡散されイイネ数はうなぎのぼり。

デジタル世界で自分達が大炎上しているとは全く知らないお二人さん。

そんな彼らを言い表すのにぴったりの言葉がある。


【 比翼連理 】
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