永遠に解けない夢を
ふいに後ろから声を掛けられた。その声音は、純粋に不思議そうだった。まさか、人がいるとは思わず緊張してしまう。


「珍しいね。この塔を気にするのは、もう誰もいないものだと思ってたんだけど。――でもそうか。まだ、意味があったのか」


おそるおそる振り返れば、そこにいたのは少年だった。塔をじっと見つめていた珀色の瞳が、こちらに向けられる。


「名前、教えて?」

どこか、含みのある言い方だ。

「……朱里です」

少年はしばらく黙ったままで。それから、静かに微笑んだ。

「ん。よろしく朱里。オレは何だと思う? ここへ来る際に見てきたはず――だけど」


 はっとする。どうりで、妙な既視感があるはずだ。



「わかったみたいだね。ーー神月だよ。改めてよろしく」



これが、この少年との出会いだった。



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