兄の溺愛がマジでウザいんですけど……《完》
「ただいま……」



私はうつむいたまま言って、階段を上ろうとした。



「それ、どうしたんだよ……」



お兄ちゃんの声に、視線を自分の胸元に向ける。



慌てて誠也の家から飛び出してきた私の制服のネクタイはほどけたままで、シャツも第三ボタンあたりまで開いていた。



「何でもない……」



私は両手で、開いていたシャツを閉じて押さえた。



「何でもないことないだろ……
つーか、なんで泣いてんだよ」



心配そうにのぞきこむお兄ちゃんの顔を見上げると、また涙がポロポロこぼれてきた。
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