俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
「あの後、如月さんとなんの話をしていたの?」

私が踏み込んでいい話じゃない。

でも尋ねずにはいられなかった。


「お前について色々聞かれたんだ」


それはどういう質問?

結婚相手だと説明したの? 


喉元まで出かかった疑問を口にできない私はやっぱり意気地なし。

胸の奥が火傷をしたように痛くて、苦しい。

副社長と如月さんの関係も全部込みで、私はこの結婚を了承したのに、気持ちをコントロールできないうえに目頭までもが熱くなってくる。


「今日は先に休んで、ください」

小声でそう言って踵を返そうとした瞬間、グイッと手首を引っ張られた。


「な、に……!」

不安定な姿勢のまま、まるで倒れこむように彼の胸の中に受けとめられる。


「……やっと抱きしめられた」

掠れた低音が耳に響く。

彼の腕の中はいつもの香りに混じって、外の香りがした。

その温もりに涙が零れ落ちそうになる。


この人の一挙手一投足に私の心はこんなにも簡単に乱される。

どう接していいのか、なにを答えれば正解なのか、今の私にはもうわからない。


「今日一日長かった。詠菜が目の前にいるのに触れられないのはキツイ」

会議の後すぐ抱きしめたかった、と耳元で囁かれて息を呑んだ。

思ってもいなかった言葉に涙が引っ込む。
< 127 / 221 >

この作品をシェア

pagetop