俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
「う、うん。彼との結婚を真剣に考えているから、孝也とふたりで会うのはちょっと……余計な心配をかけたくないし」

「へえ、どんな男? いつ知り合ったんだ? この間坂本に聞いた時はいないって言ってただろ」

「私は知らないって答えたでしょ。いないとは言ってないわよ」

「同じようなものだろ」

孝也の口ぶりから、半信半疑のような雰囲気が伝わってくる。


どうしよう。

どうやってこの場を乗り切ればいい?

おめでたい場所で険悪な雰囲気になるのは嫌だし、もめ事を起こしたくはない。


その時ほんの一瞬脳裏に浮かんだのは、整いすぎた面立ちに一筋縄ではいかない意地悪な彼の姿。

「ええっと、カッコよくて仕事ができて、大人で……強引で自分勝手だけど優しくて……家族を大切にしている人」


頭の中に浮かぶのは、たったひとりの男性。

腹が立つし、ペースも崩されっぱなしなのになぜか憎めない、あの人。


「……へえ、同じ会社の人?」

「う、うん、上司なの」

思わず副社長よ、と言いそうになって慌てる。

こんな独りよがりの妄想、間違ってもあの人にだけは聞かれたくない。
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