一匹狼と野良猫。


いつの間にか彼を強く掴んでいたらしい。

彼のシャツがシワシワになっていた。



「もう大丈夫だから、怖かったな」




そう言って彼は頭に手を置き2、3度前後に動かす。

彼の声が、仕草が、心を落ち着かせてくれる。

頬に何か伝う。

ソレを彼は優しく拭ってくれた。



何故だろうか。

離れたくなくて、腕を彼の背中へ回す。

彼も同じく手を回して、私の頭の上に

自分の顎を乗せてきた。



何故だろう、落ち着くの。



彼は黙って背中をゆっくりさすってくれる。


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