Last note〜特性を持つ者へ
インターフォン越しに挨拶を済まし、
しばらくすると、ドアの鍵の音がした。
チェーンロックの隙間から、黒髪の女性の不安そうな大きな瞳が覗きこんできた。

「…どのようなご用事で?」

か細い声が少し、怯えているようだった。

「少しお話を伺いたいのですが、
よろしいでしょうか?」

難波さんがそう言うと、その女性はチェーンロックを解除してドアを開けてくれた。

「…人目が気になるので、どうぞ。」

「失礼します。」

一人暮らしのその女性の部屋は、被害者のアパートとは違い、8畳以上の広さで薄緑を基調とした家具で統一されている。
白いテーブルの上には花瓶に紫陽花が生けられている。

俺達は座布団に座り、彼女が小さなお盆を運んできて俺らの前に座った。

「あの、お茶しかありませんが。どうぞ」

「あぁ…お気遣いなく。」

その女性の名は、柊木 日芽(ヒイラギヒメ)。
23歳で、アパレル店員をやってるそうだ。
睫毛も長く、憂いた瞳の色は色素が薄くて吸い込まれそうな位に綺麗で、とても色気のある女性だ。

難波さんなんか、あまり美人に縁がないのか少し耳が赤くなっている。俺はそんな様子を見て、難波さんの腕をつついた。ハッとした難波さんは1度咳払いして話を切り出した。

「つかぬ事をお尋ねしますが、
柊木さんは最近ストーカー等の被害に合っていませんか?」

難波さんのその言葉に、彼女は顔を赤く染めた。

「…はい。その通りです。
最近ずっと見られてる気はしていました。」

そう言いながら、ベランダの外を眺める。

「私、昔から鈍い所あって最初は気づかなかったんですが、先週隠し撮りの写真がポストに入ってて…」

彼女はお気に入りの下着がある日足りない事に気づいて、盗まれた可能性があると気づいたらしい。
それからとゆうものの、洗濯物は全て室内干しにしていたようで、今も尚タンスの所に服と下着が干されていた。

「……っっ!?」

難波さんが女性物の下着を目にして、目を逸らした。
「すいません!お風呂場に移動させます!」

恥ずかしそうにして慌てて洗濯物をバスルームの方に移動させた。
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