Last note〜特性を持つ者へ
俺は、目の前にある紫陽花を見つめながら、彼女が戻るのを待った。花瓶に生けられてどれくらい経つのだろうか?
少し花びらがしなって、元気を無くしているようだ。

「失礼しました。あの、それでもしかして…犯人が見つかったから家に来られたのですか?」

気を取り直して柊木さんは、座り直すと難波さんが本題に入った。

「実は、柊木さん。今朝早くに二丁目の公園で殺人事件があったんです。」

彼女は眉を下げ、手を口に覆って驚いてる。

「え…それはここに来たのとどうゆう…」

「その被害者が、貴方のストーカーなんです。
この人に見覚えありませんか?」

難波さんは彼女の表情を観察しながら、被害者の写真を見せた。

「この人!1度見た事あります!」

「…いつどこで?」

「1か月前かしら。私がごみ捨てに出た時、
話しかけてきたんです。少し怪しい感じがしたので、覚えてます…。」

そう言って、彼女は恥ずかしさや戸惑いに堪え切れずに泣き出してしまった。

「あの…もう大丈夫ですよ。
不謹慎ですが、もう貴方を怖がらせる人はいませんから。…これ、使って下さい」

「すいません、警察にも1度相談したのですが、相手にしてもらえなくて…ずっと1人で悩んでいたんです。」

俺のハンカチで涙を拭いながら、握りしめた。

「失礼ですが、柊木さんは昨夜の深夜2時頃
何処で何をしていましたか?」

難波さんが少し冷たい落ち着いた声で問うと、柊木さんが悲しそうな顔をした。

「私を疑ってるんですね…ひどい。」

「そんな事ないですっ!一応関与してる方には全員聞かなきゃいけないので…」

俺がそうフォローすると、柊木さんは俺をじっと見つめて言った。俺の方が優しいと思ったんだろう。

「その時間はもう、寝てました。
一人暮らしだから、証人などいません。
でも、私はやってません!!お願い!信じて下さい!」

彼女は俺の手を取って必死にうったえかけてきた。
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