Last note〜特性を持つ者へ
「誰かと一緒だったとか、何か覚えてないか?」

難波さんがゆめちゃんに勢いよく尋ねる。
少しびっくりした顔を見せたが思い出しながら話してくれた。

「男の人は1人。
顔色悪かったから、試飲であげたよ。」

「女性は?」

「泣いてたの、その女の人。
窓側の席で1人…。」

「泣いてた…?」

夕方、窓側の席に座って泣いている柊木日芽を心配そうにゆめが見ていると、後から1人の女性が店に入ってきて、彼女の手を握りしめ慰めていたらしい。

「そのもう1人の女性、どんな人だったとか特徴分かるかな?」

難波さんが顔を赤くして問う。本当はもっと強く出たいんだろうが、俺の友人とゆう事もあって少し遠慮しているんだろう。

「全身黒のジャージ姿で、
フードを深く被ってたから顔は見てないんです。」

「そうか、有力な情報になりそうだ。
ありがとうな。」

難波さんの口元がにやりと笑った。
今すぐにでもどこかに走り出しそうな笑みだ。

「青山くん、行くぞ!!」

「あっ!やっぱりー!」

案の定、難波さんが走り出したので、俺も後を追うように店を出ようとしたが、ゆめちゃんに引き止められた。

「待って!青山くん!」

「えっ!?なに?まだあるの?」

「さっきの写真の女の人、
もしかしたら、その…」

ゆめちゃんが何か言うのをためらっている。

「何でもいいよ。」

周りの目もあった為、ゆめちゃんは俺に耳打ちで教えてくれた。

「あのね……」

その言葉を聞いた俺は、
急いで難波さんを追いかける。

「ありがとう、ゆめちゃん!
お仕事頑張ってね。」

「うん…青山くんも、気をつけてね。」

俺は"任せろ!"とゆうように拳をあげて、
店を出た。

「青山のやつ、すっかり刑事の顔だな。」

「そうだね。」

廣瀬は、窓の外を見つめるゆめちゃんの肩を後ろから抱き寄せた。

「そんな心配するなって。
俺らがあいつを信じてやらなきゃ。」

「うん…そうだね。」

ギュッと強く手を握り合った。
お互いの不安を取り除くように…。
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