Last note〜特性を持つ者へ
難波さんとしばし、遅めの朝食を摂り過ごしていると、窓の外の雨は1度やんだ。

カツサンドにがっつく難波さんの食べっぷりに感心しながらも俺はメニュー表に目を凝らす。

「青山くん、ハーブ系のはありそうか?」

「うーん。メニュー表には見当たりませんね。」

朝食を取りつつ、捜査を怠わらない。

「青山くん、ハーブ系の何を探してるの?」

ゆめちゃんが俺達が座る席のテーブルを拭きながら問う。

「ハーブ系のコーヒー、置いてないかな?」

「コーヒー?…ハーブ系なら昨日まで
期間限定で出してたよ!
ちなみにテイクアウトもね。」


どうやら「癒し」を提供する為のオリジナルコーヒーだったそうだ。

「そのハーブはまだ残ってたりする?」

「渉くんに聞いてみるね!」

そう言って厨房に入ったゆめちゃんは、廣瀬と話している。その様子を見ていると、廣瀬が俺に手招きした。

「失礼します…。」

難波さんと厨房に入らせてもらうと、
廣瀬は筒状の缶の蓋を開けて俺に向けた。

「さぁ、この匂いを追うんだ!…なんてな。」

警察犬を扱うように悪戯に言う廣瀬。
笑いそうになって少し口元がひくついたが堪えた俺はすぐに分かった…。

「……難波さん、ビンゴです。」

「まさか、親友の店の物とはな。」

俺が現場で知った、ハーブと同じ匂い。
それはつまり、犯人がここに来た可能性も高い事を示していた…。

「…事件の解決に必要ならあげるぞ?」

廣瀬が何かを察して申し出てくれた。

「うん、是非。」

そう言うと廣瀬は、B6サイズの小袋にそれを詰めてくれた。

「ちなみに、この男性かこの女性、
ここで見たことはないか?」

難波さんがゆめに被害者と、柊木 日芽の写真を見せた。

「二人とも昨日、お客さんとして来てたよ。
確か夕方位かな。男の人はテイクアウトで。」

ゆめちゃんの人の顔の記憶力は健在のようで
感謝した。

ひとつ糸が繋がったのだ……。


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