Last note〜特性を持つ者へ
だがその時、双眼鏡の中の柊木日芽が何かに驚いて花瓶を落とした。

「えっ!?」

部屋の中に柊木日芽以外の人間がいる。

ベージュのジャケットを羽織った男が、
柊木日芽に襲いかかる様子を見た俺は双眼鏡を捨ててすぐさま彼女のいるアパートに走った。

「きゃーっ!嫌!誰かー!」

アパートが割と近くて良かった。
二段飛ばしで階段を駆け上がった俺は柊木日芽の部屋のドアを開けて入った。

「柊木さん!!警察だ!!」

「……っっ!!?ちっ!」

俺の到着で、床に押し倒されていた柊木日芽の体から離れた男はすぐさまベランダから飛び降りて逃げた。

「あっ!くそっ!!」

男は茂みの中に上手く着地したようで、
必死に足を動かし走り去ってしまった…。

正直俺はここから飛び降りる勇気はない。

「刑事…さん?」

「柊木さん!怪我はないですか?!」

俺は男は諦めて、柊木さんの保護を選択した。

「大丈夫です…怖かった…。」

「わっ!?」

柊木さんが俺に飛びついてきた。
ぶるぶると体を震わせ、俺にしがみついてきて、今度は俺が押し倒されそうになっていた。
胸を押し付けられて俺は焦ったが、、

「…ぅ…ううっ…!!」

ポロポロと涙を流す彼女を引き剥がす事は出来なくて、俺は背中をぽんぽんとさすった。

「もう、大丈夫です…落ち着きましょうか。」

それから俺は難波さんに連絡して、被害者の家ぢゃなく柊木日芽の家に来るように頼んだ。

彼が来るまでの間、俺は柊木日芽を泣き止ますのに必死だった。



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