Last note〜特性を持つ者へ
少し泣いて落ち着いてきたのか、
柊木さんはやっと俺から離れてソファにかけた。

「あの、助けて頂いてありがとうございました。」

「いえ…まぁ、警察ですから。
さっきの男、知り合いですか?」

俺はなるべく優しい口調でそう聞くと、
柊木さんは首を横に振った。

「鍵をかけていたのに、突然部屋に上がってきたんです。凄く怖い顔して、"明部の代理だ!着いてこい!"って言われて…。」

「なるほど。被害者の知り合い、か。」

「でも何が何だか…怖かった。」

辛そうな顔で訴えてくる彼女だが、
正直現状は「重要参考人」である事に間違いない。
俺は簡単にその事を伝えると、彼女はやはり悲しそうな顔をした。

「でも、俺は言いましたから。
柊木さんを信じるって。
だから、真犯人はちゃんと俺が捕まえます。」

「お願いします…どうか。」

うるうるした瞳で見つめられる度、
俺の脳裏にはレナさんの顔が浮かんだ。

(なんか、色目使われてる気もするんだよな…)

俺はその事も気になっていた為、
彼女の本心を探ろうと思い打ち明けた。

「柊木さん、あなたは特性持ちですよね?」

その言葉を聞いた彼女は、
目を見開いて俺から素早く離れた…。

「……なぜ、それを…?」

先程割れた花瓶のガラスの破片を俺に向けてきた。

「大丈夫です、俺も特性持ちです。」

「えっ!?……どうゆう、こと?」

俺は両手を挙げて何もしない事をアピールする。

「すいません、見てしまったんです。
とても…素敵な特性だった。」

俺は諭すように柊木日芽に話す。

「貴方は?どんな特性を…?」

「"匂い"の特性です。それを生かして警察になったんですよ。親友や上司には、警察犬なんて呼ばれてますがね。」

「……匂い。知ってるわ、"Last note"って呼ばれてる物ね。ほんとに…身近に居るものなのだわ…」

だんだんとガラスの破片を持つ手が、下に降りていく。
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