上司との結婚は致しかねます

 笑っている顔と言われて胸の奥がズキリと重く痛む。
 あの、美咲さんに向けた笑顔はなんだったんだろう。
 何を言われたらあんなに………。

「どうしたんすか?暗い顔して。」

 近くにいた上坂くんに声をかけられて我に返る。
 暗い顔してたかな。
 ダメダメ仕事に集中しなくっちゃ。

「ううん。なんでもないの。」

 上坂くんは昨年入社の可愛らしい後輩だ。
 後輩と言っても学卒の彼と短卒の私とでは歳は同じだった。
 席は近いけど、あんまり話したことなかったなぁ。

「鬼の居ぬ間に内田さんと仲良くなっておこうと思って。」

「鬼……って高宮課長?」

「それはもちろん。
 だって俺がちょっと仕事のことで内田さんに話しかけようとしようものなら、こーんな目で睨んでくるんだから。」

 目を吊り上げた仕草はいつも私が鬼上司の高宮課長を表す時にやっていた仕草と一緒で笑えてしまった。

「ハハッ。笑った。」

 垂れ目な目尻がもっと下がってより可愛らしい顔つきになる。

「だって、その顔、おかしいんだもん。」

 こういう人にも実は彼って笑い上戸なんだよって教えてあげたくなる。

「高宮課長は内田さんの保護者なのかね。
 悪い虫がつかないようにいつも監視してるって感じ。」

 保護者かぁ。
 確かにそんな風なのかな。

 恋人というより保護者の方がしっくりくる。
 思わぬ指摘に少し胸がチクリとした。

 やっぱり私より彼の隣には似合う人がいるのでは……という思いが頭をもたげて慌ててその思いを追いやった。


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