Fleur rouge
幼い頃の私はありのままだった。

でも容姿が変わった訳ではなく、容姿は昔から大して変わらない(パーツ的に)。異点は主に性格。


"おしとやか"。そんな聞こえの良いものじゃなくて、"根暗"なんて言うマイナスなイメージが私のキャッチフレーズ。

「おいブス」
「お前ってほんと根暗だよなー」
いくら嫌味や悪口を言われてもヘラヘラ笑うことしか当時の私に為す術はなかった。そうすることで、誰かが私の事を好きでいてくれると思ったから。


『誰かに必要とされたい』
幼い頃の私の欲望。その為に私は身を捨てた。


誰に悪口を言われても笑っていたし、勉強も人の何倍も時間を費やして頑張ったつもりだ。しかしその努力に比例するように私の容姿は衰えていった。ニキビは顔中に広がり、肌荒れなんてレベルじゃないくらい。でも、一人の女の子が話しかけてくれるようになった。

「ここ、教えて?」
『勉強を頑張ってよかった』
素直にそう思えたのは初めてだった。


『やっと私にもトモダチができたんだ』
そう思うとニヤけが止まらなかった。




「ウザイ」
あの女の子の声だ。…誰の事だろう?

しかしバレてはいけないと直感的に思い、彼女達の死角になるであろう場所に身を隠しつつ話を盗み聞きした。


「あー、長谷さん?」
私?
「そっ。だって休み時間も勉強してるなんてただのヤバい奴じゃん」
鼻で笑いながら話す彼女はやっぱり私にいつも話しかけてくれる彼女で。足から力が抜けそうになった。私の"頑張り"は…無駄だったのね。
「でも、嫌いなら、なんで喋っていられるの?」
この質問は私を守る為と言うよりも純粋な疑問だったと考えた方が辻褄が合う。



「そんなの決まってるでしょ?こうやって馬鹿にするのが好きだからだよ」
なんで?何が駄目だったの?努力って何?分かりきってるはずなのに問う私はまだ幼き小学生。それを共有できる人もいなければ相談する人もない。私は"悲しい人"。


中学生になってからは楽しくやっていた。小学校の時と同じ顔が揃うのが心地悪くて私立の中学校に入学した。初対面の相手しかいない為緊張したものの、小学校の時のあの痛みとは比にならない。私は"いじめられたくない"その一心で取り繕うことにした。
形から入ろうと意気込んだ結果とりあえず髪型を変えることにした。手入れされていない伸びきった髪を一つに結ぶ(それもかなり高い位置に)ようにし、前髪は眉下一cmで切り揃えた。見た目が変わっただけなのに不思議と勇気が出てきた。
そして自分から積極的に話しかけ、見事私にはたくさんの友人ができた。
それでも、『まだまだ』と欲は止まることを知らずに成長していく。
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