犬猿だったはずの同期に甘く誘惑されたら
「マジって...。
アンタのマジはほんと、信用ないわ。
ウソつくならもっとマシな嘘ついてよね!」
私はそう言って浅香の左奥にあるコーヒーメーカーに手を伸ばす。
マグカップの棚から自分のを取り出して、コーヒーを淹れていると、
「ったく。前からお前は俺の言うことをひとつも信用してくれないよな」
と少ししょぼんとした様子で、浅香は小さなシンクに両手をついて前にもたれかかった
それに釣られて、コーヒーを淹れ終わった私も白地に水色のドットが書かれたマイマグカップを右手に、コーヒーメーカーを背にして浅香の隣に腰を預けた。
「そりゃ、あたりまえでしょ?
アンタのどこ見て信用するっていうの?」
すぐそば、左隣に見える浅香の元気がなさげな背中にビシッと指摘する。
「あたりキツ...」
いつもとは打って変わっての覇気のない返事が返ってきた。
あれ?ちょっと言い過ぎちゃったかしら…。
少し心配になって、そのまま浅香の背中を見つめていると、彼は急にガバッと上体を起こして、
「んま、いいや。
で?実際、今日の夜はどーなの?」
と開き直ったような笑顔を私の方に向けた。