犬猿だったはずの同期に甘く誘惑されたら



まずい...。このままでは雰囲気と浅香に呑まれてしまう。


そんな恐怖を覚えた私は自分が冷静になれる話題を探した。


「そう言えば、浅香の限定コスメのテーマ、聞いてなかったんだった。
何にしたの?」


こういう時は、仕事の話に限る。
仕事の話をする時は、さすがに浅香も冗談やからかいは言わない。
それに、ON/OFFのスイッチがハッキリしてる浅香に対しては、うってつけの話題だ。



よし、これで大丈夫と高を括って、浅香の返事を待つ。


それなのに、一向に返ってこない回答に、私は不思議に思って右隣を見ると、浅香は全てを見透かしているかのように私にニヤッと笑いかけた。



「守屋。今はデート中。仕事の話はしない。」



...やられました。完敗。


完全に浅香のペースに巻き込まれた私は、その後も心を乱しに乱され、自宅まで帰ってきた時には、もう訳が分からなくなっていた。



どうしちゃったの。私。
考えれば考えるほど混乱する脳内はもう自分一人では収拾がつけられず、総務部にいる同期の武部 美和(たけべ みわ)に

『ヘルプミー』

とメッセージを送ったのだった。



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