彼の溺愛はわかりづらい。


年上の相手に向かって意外と辛辣な燈と、ニコニコしてて、やっぱり掴みどころがない世永くんに挟まれて、私はどうしたらいいのかわからなかった。



「こーと♡」



…そのうえ、語尾にハートマークをつけているような世永くんに、どう反応したらいいのかわからなくて、ただうろたえるだけだった。



「…簡単になびいてんじゃねぇよ」



そんなとき、燈がそんなこと言ってくるから。



「なびいてなんかない!」



噛み付くような勢いで私は言い返した。



「ならいいけど」

「それは残念」



安心したように笑う燈と、貼り付けたような笑顔を見せる世永くん。

…きっと、どっちにときめいたのかなんて、明白だった。


…あの海堂に、やっぱり私、ドキドキしてるし。
燈はやっぱり、私を愛おしそうに見つめてくるから。

私はいたたまれないような気持ちになって、俯いた。


だけど、そんな私を見たらしい燈は、私に近づいてきてるみたいだった。

燈の匂いが、近づいてくる。
そのことに、やっぱり尋常じゃないくらい、心臓がうるさくて。




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