彼の溺愛はわかりづらい。
「デートはね。オシャレするものなの」
「まー、うん」
「私が!琴を!好き放題させたい!」
「それが目的かい」
でもね。
嫌な予感しかしないから嫌だよ?
「でもさ。さらに可愛くなったら、惚れ直しちゃうかもしれないよ?海堂」
「そ、れは…」
「お、心揺らいでる?」
「そりゃあ、ちょっとは…」
可愛いって思われたい願望は、人並みにあるけど。
可愛くなれる自信はないし、私が満足しても可愛いって思われるかどうかわからないし。
…どうしよう。
自分が恋する乙女みたいでちょっと気持ち悪い。いや、紛れもなく恋する乙女なんだけど。
「マジで琴かわいい」
「からかわないで、しぃ」
「いやほんと、冗談抜きで」
「しぃ~」
なんかいっそ、冗談の方がいい気がしてきた。
自分が可愛いとか、落ち着かない。