彼の溺愛はわかりづらい。
「でもさ。海堂は琴に一目惚れなんでしょ?可愛いって言われないの?」
「…言われない」
言われてたかもしれないけど、記憶にはない。
私のこと「可愛い」と言ってくるのは、お兄ちゃんと世永くんぐらいだ。
「…クソ海堂」
「別にいいし。しぃも気にしないで」
私が気にしてないんだから、しぃが気にする必要なんかない。むしろしないでくれ。余計にややこしくなるから。
「…琴」
「ん?」
「私ね、きのう彼氏と別れたの」
「え!?」
何の冗談だ、この流れで。
そう思ったけど、しぃの様子を見ると、どうも冗談を言ってるようには見えなくて。
「…他に好きな人ができたんだって」
見たことないくらい暗いしぃを見てられなくて、私はしぃを抱きしめた。