彼の溺愛はわかりづらい。
それから30分後。
「琴、できたよ」
「うん…」
出された鏡を見てみると。
普段チョイスしないような、レースがついたヒラヒラの服に、うっすらとナチュラルメイクをされた顔。おまけに、いつも下ろしている髪はアップになっている。
「…さすがに、「これ誰?」とはならないけど、さすがしぃ、安定の腕前だなぁ…って思った」
「でしょ」
「でもだからこそ、この恰好、違和感しかない。誰よこれ」
「…なったじゃん」
「なったね」
だっていつも、ジーパンばっかりだし。
こんな可愛い系統の服を着ることなんて、滅多にない。
…だから貴重な体験…とか思えば、そうなんだけど。
これはこれで、海堂に見られると思うと、今すぐにでも脱ぎたくなる。
…ジャージよりマシか。マシだと思うことにしよう。
そうじゃなきゃ多分、この先心折れることいっぱいありすぎる気がする。ないならそれに越したことはないけど。