彼の溺愛はわかりづらい。


ピンポーン



「あ、来たよ。琴の愛しのカ・レ・シ」

「…しぃ、言い方気持ち悪い」

「じゃあちょっと、玄関行ってくるねー。琴はここで待ってて」

「うん」



バタバタと階段を駆け下りていくしぃ。
転んだりしないようにね…と、思いながら、しぃの部屋の本棚を勝手に漁って、前に読んでいたマンガを借りる。

気になっていた少女漫画。今度映画化されるらしい。



ガチャ



「琴ー、連れてきた」

「え……うん…」



ゴロゴロしていたのから一転、正座になる。
ちゃんとマンガもしまった。大丈夫、大丈夫…。



「…」



後ろから現れた海堂は、私を見ても何も言わない。

…さすがにないと思うけど、気づいてないなんてことはないよね?




< 180 / 209 >

この作品をシェア

pagetop