彼の溺愛はわかりづらい。
ピンポーン
「あ、来たよ。琴の愛しのカ・レ・シ」
「…しぃ、言い方気持ち悪い」
「じゃあちょっと、玄関行ってくるねー。琴はここで待ってて」
「うん」
バタバタと階段を駆け下りていくしぃ。
転んだりしないようにね…と、思いながら、しぃの部屋の本棚を勝手に漁って、前に読んでいたマンガを借りる。
気になっていた少女漫画。今度映画化されるらしい。
ガチャ
「琴ー、連れてきた」
「え……うん…」
ゴロゴロしていたのから一転、正座になる。
ちゃんとマンガもしまった。大丈夫、大丈夫…。
「…」
後ろから現れた海堂は、私を見ても何も言わない。
…さすがにないと思うけど、気づいてないなんてことはないよね?