彼の溺愛はわかりづらい。


駅ビルは人が多いから、どこかに知り合いがいるんじゃないか…って思って、会っちゃったらどうしよう…と毎回思う。
けど、その割に実際に会うことは少ない。

…今、この状況で誰かに会ったら、なんて答えよう…。



「げ」

「どーした?」

「…クラスの女の子たちだ…」

「は?」



…そういえば今の、思いっ切りフラグだったよな……失敗。
見られたらどうしよう。やばい。見られたらやばい。

多分、そのときが私の命が尽きるときだ。
万が一「付き合ってる」なんて言ったら、殺される。

…いや、大丈夫。実行委員の買い出しだって誤魔化せばなんとか…。


私がひとり慌てていると、海堂は私の頭を優しく撫でてきた。



「…なんかよくわかんねぇけど。とりあえず心配すんな。俺が何とかしてやるから」

「何とかって……どうするつもり?」



私がそう聞いたそのとき。



「あれ?琴と海堂くんだ。おーい!」



…なんてお約束な。

いくらなんでもベターすぎない?
っていうかどうしよう本当に。




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