彼の溺愛はわかりづらい。







外と違い、クーラーが効いていて涼しいけど、人が多い。



「…やっぱり、人多いね」

「悪い」

「いや、別に海堂のせいじゃないから大丈夫。それに、割と好きだし。こういうところも」

「…そうか」



別に無理してるわけではないし、嘘を言ったつもりもないけど、海堂はそれでも納得いかなそうな顔。

…心配されてるのがわかって嬉しくなるけど、どうしたら安心してくれるのかもわからないから、私の気持ちはプラスマイナスゼロになって、表情筋が動いた感じもなかった。



「…文房具、見に行くんでしょ?本屋さんにならあるかな」

「だろうな。そこにするか」

「うん。私もちょうど、ほしい本あったんだ。見てもいい?」



…本って言っても、ラノベだけど。
ちゃんと文字が書かれてるし、マンガってわけでもないから、本って言っても大丈夫だと思う。



「…別にいいけど。俺から離れねぇなら」

「…っ、うん」



ほら、やっぱり。

ときどき、ものすごく心臓に悪い。




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