彼の溺愛はわかりづらい。
「渋川、え、何?燈のこと嫌いなクセに、元気づけようとしてんの?実は燈のこと好きとか?もしかしてツンデレってヤツ?」
「いや、コイツがしおらしいの気持ち悪いし。あ、でも、本音言うと、ちょっとざまぁって思った」
「容赦ないね」
「なんで容赦が必要なのか、その思考回路がわからないよ、はーちゃん先生」
あと、ついでにもう一つ言わせてもらっていいだろうか。
「…あと、はーちゃん先生。今度ふざけたこと言うんだったら、その口縫うよ?」
「うお、こっわ」
「もしくは、理事長に〝あのこと〟チクるよ?」
「…どれだ。ヤバい、知ってるはずはないと思うけど、お前まさか〝あのこと〟を……」
「チクるよ?」
ちなみに〝あのこと〟とは、はーちゃん先生の中学からの同級生である、私のお兄ちゃん(証券会社勤務)から得た、はーちゃん先生の黒歴史である。
大学まで一緒だったらしい。学部は違ったみたいだけど。
「…まさかとは思ったけど、お前、渋川の妹…?」
「どーも、朋(とも)の妹の琴(こと)で~す!」
「マジか…」
「え、羽澄と渋川って、繋がりあんの?」
すっかり元気そうになった海堂くんよ、聞いてくれ。あるのだよ、繋がり。