彼の溺愛はわかりづらい。


それで、多分あれは、今思うと、志波の(粋な?)計らいだったんだと思う。


…なのに俺は、出だしを間違えて、今は俺以外がみんな認めるような、立派な「犬猿の仲」にまで発展した。

…まぁ、アイツの怒ったところも可愛いからいいんだけど。

なんて思って、さらに憎まれ口を叩いてしまうあたり、やっぱり俺は小学生かよ…って思うし、志波や羽澄からもよく「小学生かよ」って言われる。



「では、これから諸々を決めていきまーす」



教卓の前に立った志波のはっきりとした声で、俺は我に返った。


…そうだ、今はLHR中で、体育祭のあれこれを決めるんだった。



「…まぁ、諸々なんて言っても、まずは実行委員を決めてーっていうお達しなので、実行委員を決めまーす」



限りなくやる気のない志波の声に、俺は顔をしかめる。


…誰もやりたがらないだろ、これ。

男女一人ずつ…なんてさ。

夏休み中も作業しなきゃいけないらしく、部活に入ってる奴にとっては地獄以外の何物でもないし、部活やってなくても、「なんでこのクソ暑い中、休みだっていうのに学校で作業しなきゃなんねぇんだよ」という話になる。

でももし、渋川がやるっていうなら、男子の方は俺がやる。他の男と、二人っきりになんか、させてたまるかよ。



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