彼の溺愛はわかりづらい。


それから十分ぐらい経った。

だけど、未だに何も決まっていない。



「…もー決まんないから、私が勝手に決めるわ」



イライラがピークに達したらしい志波が、聞いたことないほどに不機嫌さを露わにした声色で言った。
…今のは俺でも、ちょっと身震いしたぞ。



「今日は14日だから、14番の海堂、あんたに決まり」

「…はぁ~?」



ふっざけんな。理不尽極まりねぇじゃねぇか。


…おい渋川、ニヤニヤしてんじゃねぇよ。



「で、女子なんだけどー」

「はい!私やる!」

「いや、私がやるよ、志波さん!」



…お前らクソどうでもいい…。

渋川は手ぇ挙げたり…しねぇかな、しねぇよな、うん。わかってた。


これで渋川とできるんなら喜んでやるのに。
…夏休み、渋川と二人っきり…。

うっわ、想像しただけでにやけそうだ。


…まぁでも、渋川とはできねぇし。

代わりにもならない、香水臭い奴ばっかりだし。


俺はもう落ち込むしかない気がしてきた。



「ねー、海堂、あんたが決めなよー」



…丸投げかよ。ふざけんな志波。

…あんな奴ら、どいつもこいつも同じで、選ぶとか選ばないとかそういう話じゃねぇし。



「は?そもそも俺はやらねぇし」



…まぁ、無駄な足掻きだってことはわかってるけどな。

志波の言葉は、半強制的だし。




< 62 / 209 >

この作品をシェア

pagetop