彼の溺愛はわかりづらい。
それから十分ぐらい経った。
だけど、未だに何も決まっていない。
「…もー決まんないから、私が勝手に決めるわ」
イライラがピークに達したらしい志波が、聞いたことないほどに不機嫌さを露わにした声色で言った。
…今のは俺でも、ちょっと身震いしたぞ。
「今日は14日だから、14番の海堂、あんたに決まり」
「…はぁ~?」
ふっざけんな。理不尽極まりねぇじゃねぇか。
…おい渋川、ニヤニヤしてんじゃねぇよ。
「で、女子なんだけどー」
「はい!私やる!」
「いや、私がやるよ、志波さん!」
…お前らクソどうでもいい…。
渋川は手ぇ挙げたり…しねぇかな、しねぇよな、うん。わかってた。
これで渋川とできるんなら喜んでやるのに。
…夏休み、渋川と二人っきり…。
うっわ、想像しただけでにやけそうだ。
…まぁでも、渋川とはできねぇし。
代わりにもならない、香水臭い奴ばっかりだし。
俺はもう落ち込むしかない気がしてきた。
「ねー、海堂、あんたが決めなよー」
…丸投げかよ。ふざけんな志波。
…あんな奴ら、どいつもこいつも同じで、選ぶとか選ばないとかそういう話じゃねぇし。
「は?そもそも俺はやらねぇし」
…まぁ、無駄な足掻きだってことはわかってるけどな。
志波の言葉は、半強制的だし。