彼の溺愛はわかりづらい。
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「ほんっと、ありえない」
心底怒っているようにそう言うのは、俺と二人っきりが「ありえない」のか、夏休みなのに学校に行って毎日作業しなきゃいけないことが「ありえない」のか。
…多分両方だろうな。
なんて、自分で落ち込むようなことを考えて、まんまと落ち込んでいる自分には失笑だ。
それを確かめるように、俺は持参品の某有名アイスキャンディーのソーダ味を食べながら聞き返す。
「なにが」
「今ここに、こーして私とあんたがいることが」
「二人っきりで?」
「あーそーだよ」
…やっぱりな。
そう思いながらも、実際本人の口から聞いてしまうと、結構ダメージがデカいもんだ。
落ち込みながらも、床に置いてある看板を一生懸命作っている渋川の髪が、珍しくだんごにされていて、それにドキッとした。
…うなじ出してるとか、反則かよ。
こうして俺がいちいち渋川の色んなところにドキドキしていることは、一心不乱に作業をしている渋川には気づかれていない。