彼の溺愛はわかりづらい。


そんな桃色な脳味噌だったからだろう。
…俺は完全に浮かれていた。



「じゃ、遠慮なく。駅前のサーティツーアイス、トリプルで」



遠慮なくつったって、遠慮なさすぎだろ。

…まぁ、持て余したバイトの給料あるからいいけど。



「腹壊さねぇの?」

「夏の私のお腹は、鋼でできてるんだよ」

「錆びるだろ」



本当に渋川は、面白い奴。
鉄とか銅とかじゃなくて、鋼ってチョイスするあたり。最高に面白い。



「…や、やっぱやめとけ、トリプルは」



だけど、羽澄いわくヘタレの俺は、「もし渋川が腹壊したら…」なんて考えて怖気づいて、気づけば渋川に却下をしていた。


…あ、あからさまに不満そう。子供かよ。



「なに、やなの?」

「腹壊されたら困る。一つにしとけ」

「えー、関係ないじゃん、海堂には」



関係あるよ。

嫌なんだよ、俺が。
…お前が苦しそうにしてるの、想像しただけで。




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