彼の溺愛はわかりづらい。
「…いつもの調子に戻ったな」
「なにそれ」
少し笑った彼女を見て照れて赤くなった顔を見られないように、俺は彼女から目を逸らした。
「…別に。さっさと作業終わらせるぞ」
「さっきからやってるの私だけどね」
「今食べ終わったから俺も手伝う」
「そうしてくれ」
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なんだかぼんやりしている渋川に代わって、俺がほとんど片付けを済ませていた。
「ほら、終わったから。そろそろ行くぞ」
「お、サンキュ。じゃ、行こっか」
お腹が空いたから、このままファミレスに行ってからアイスを食べに行くことになった。
…楽しみすぎて一人でにやけていたら、渋川はおもむろに荷物の中から何かを取り出した。水筒だ。
「…っぷはー!うまい!」
すごいいい飲みっぷりだ。
「なんだ、飲み物持ってきてたのかよ。にしても、オッサンっぽい飲み方だな」
「うるせぇ」
…なんで俺はいつも余計なことを言ってしまうんだろう。
「いい飲みっぷりで、いいじゃんってことじゃねーの」
気分を悪くしたような渋川に、無理矢理とも言えなくもないフォローをいれる。
それだけで、なんだかどっと体力を使った気がする。