彼の溺愛はわかりづらい。


「…お前、大丈夫?夏バテ?」

「え?う、うん、そうだよ」

「違うんだな」

「…」



そんなに挙動不審だったのかな、私。

…夏バテってことにしたかった。
そしたら、こんなドキドキには、気づかないで済んだかもしれないのに。

海堂にも世永くんにもドキドキしちゃってるのは、きっと三次元の男の人にあんまり耐性がないのと、二人の顔が無駄に整ってるからだよ。



「なに、俺にドキドキしてるとか?」

「…そんなわけ、ないでしょ」

「そうか…。ドキドキしてれば、よかったのに」

「え?」



なに、それ。
…っていうか、ほんとはしてるっぽいから。ドキドキ。

心臓うるさくて、飛び出しそうなんだけど。それは言わない。



「…誰か、いるんだろ」

「え」



なんで急に。
っていうかそれって、もしかしなくても世永くんのことだろうか。



「下に。前にお前が言ってた『名前呼びしてくる男』ってヤツ?」

「なっ…!」

「へぇー、そうなのか」



…おかしい。

何がおかしいって、ここでうまーく誤魔化すことができなかった私もおかしいし、なんでかわかんないけど不機嫌そうな海堂もおかしいと思う。



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