秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない

そして、嘘だと信じたかった。

あのアルフォード様が、王太子様らと揃って一人の令嬢を崇拝するように愛を囁き、人目も憚らず肩を寄せ合ったり触れ合ったりと、貴族らしかぬ行動をしていたこと。二人きりで密室で長く過ごしていたという目撃情報もあったらしい。

あの優しいアルフォード様が、側近らと共にローズマリー令嬢を悪く思う女子生徒らを脅しも同然で次々と咎めていたこと。

特に、王太子様の婚約者である、あのアゼリア様に対して敵意を向けていたこと。

何もかもが、信じられなかった。

……学園祭のあの日、アルフォード様に実際にお会いするまでは。




あの日、私は聖女見習いの仲間と共に、王都内の貴族学園に来ていた。

貴族学園では年に一度、生徒主催で『学園祭』というお祭りを開き、普段貴族の者しか足を踏み入れることが出来ない学園の敷地だが、この日だけは平民向けに一般開放をするのだ。

ガーネット公爵令嬢のアゼリア様は、孤児院の慰問やバザーを定期的に開いていて、地域貢献で毎回お手伝いに来ていた私たちは、そこでアゼリア様と知り合う。

貴族でありながらも、身分関係なく全ての民に優しいアゼリア様。聖女見習いの私らにも優しくしてくれていた。
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