秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
そんなアゼリア様に、私らは学園の『学園祭』に招待された。
貴族学園の訪問なんて、神殿や市井でしか過ごしていない私たちにはもちろん初めてで、とても緊張したのを覚えている。
だけど、アゼリア様とそのご友人である令嬢らに歓迎され、お店や展示場を共に回ってくれて、とても楽しい時間を過ごしたのだった。
貴族間で流行っているスイーツを食べたり、女子生徒らが刺繍したハンカチを購入したり。騎士科の生徒の模擬演舞を見たり、本当に楽しかった。
……だが、事件は私らの帰り際に起きる。
お店や展示場を一通り案内してもらって、神殿のみんなへのお土産も購入して、アゼリア様たちに出口である校門まで送って頂く、その最中。
王太子殿下と、その側近の令息ら。……そして、その真ん中に護られるようにして共に歩いていたローズマリー令嬢と、私らは鉢合わせたのである。
最初に声を掛けてきたのは、ローズマリー令嬢。
『あら、アゼリアさん』と、アゼリア様に向かって、鈴を転がしたような声でにこやかに話しかけてきたのだが。
『あら?平民の子らの案内しているのね?なんてお優しいのかしら』と、傲慢な貴族らしい、上から目線の物言いで、私たち聖女見習いの方へと目を移した。