秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
すると、アゼリア様の学友である令嬢が、その発言を諌める。
『そのような言い方はおやめ下さい、トルコバス侯爵令嬢。彼女らは、神殿で働く聖女見習いの方々ですよ?』と。
『神殿の……聖女見習い?』
そう呟きながら、ローズマリー令嬢の表情が一瞬変わった。
あからさまな憎悪が滲み出た目つき。
ハッと気付いた時には既に、先程と変わらないにこやかな表情に戻っていた。変化はほんの一瞬だったので、私と同じく気付いた人は他にいないだろう。
だが、一瞬でも垣間見えた敵意。あまり良い気分ではなかった。
聖女見習いであると紹介されたので、王太子殿下の手前もあるし、私たちは挨拶のため頭を下げようとした。
のだが、遮るようにローズマリー令嬢が、私たちに言葉を投げ掛ける。
『あら、挨拶は不要よ?ここは学園、身分関係ないし?神殿ではお祈りばっかでカーテシーなんて教わらないでしょ?いいのよいいのよ』
『ローズは優しいな?平民らに敬意を強要しないなんて』
『ええ、だって身分違えど同じ人間ですもの』
『やはり君は聖女のようだ!』
『……』
ローズマリー令嬢の一言に、私たちは凍りつき固まった。
この令嬢はいったい、何を言っているのだ。