秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
しかし、派閥がどうであれ、ローズマリー令嬢の口から飛び出た今の発言は大問題だ。
『トルコバス侯爵令嬢!今の発言を撤回し、謝罪なさいませ!国の平和を支える神殿を、見習い聖女の前で批判するなんて、貴女はそれでも貴族ですか!』
『えっ、私、そんなつもりじゃっ……』
『どのようなつもりかは、私には全くわかりません!……今すぐ撤回なさい!』
アゼリア様がムキになってローズマリー令嬢を諌めるのには、理由がある。
ただでも聖女のいる神殿と神殿を批判する一部の貴族派には溝が出来ているのに、この発言を許してしまうと、ますます溝が深くなる。それを考慮しての苦言だろう。
令嬢とはいえ、貴族の家門に名を連ねる者が発する国教、神殿への批判は格好のスキャンダルだ。小さな社交界である学園内でも騒がれるはず。少数派の貴族が騙る神殿への批判など、失言である。そんな失言を堂々と言ってのけたローズマリー令嬢は、他の生徒から白い目で見られるどころの話でない。
アゼリア様は、ローズマリー令嬢を咎めながらも失言の撤回を求めるのは……これ以上、立場が危うくならないように救済しようとしているのだ。
なのに……。