秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
『で、でもっ……神殿が貴族平民問わず聖力を所持した者を集めて、独占してるって話を聞いたことがあるわ……』
『……え?』
『天候から大地の恵み、魔獣まで操れる絶対的な力、【聖力】を掌中している神殿の権力に、国は翻弄されているのよ?だから、私は……』
『……貴女!』
驚きの発言に、開いた口が塞がらなかった。
神殿が聖力を独占?まさか、そのようなことを本当に思って口にする貴族がいるだなんて。アゼリア様が言葉を遮るのも無理はない。
確かに……この国では【聖力】に覚醒した者は、身分性別問わず神殿に申し出て、訓練を受けなければならない。
それは一人でも多くの聖女や聖騎士、神官を輩出し、この国を護るため。
そして、【聖力】を持つ者を集約する理由とは、一個人が私益で【聖力】を独占しないようにするための措置なのだ。
なのに、その事情を理解出来ない者がいるなんて驚愕だし、神殿に身を置く者としては非常に残念だ。
見方によっては、逆に神殿が【聖力】を独占していると捉えられるなんて。
確か、貴族派のとある派閥では、神殿のこのやり方に異を唱える人たちがいると聞いた。
まさか、ローズマリー令嬢のトルコバス侯爵家がその一味なのか。