秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
ここに来たことがあるのも、私だけだと思うが。
アゼリア様にお茶会に誘われて、聖女見習いの訪れたことがある。
その、アゼリア様の御実家に、何故?
と、思っていたら、馬車の扉が開いた。
「ニーン。ここの主が、今回の件の支援者の一人なのだよ」
「えっ、ガーネット公爵が?」
そう言って先に降りたファビオ。差し出された手を借りて、馬車の外に出た。
既に外で待っていたガーネット公爵家の執事さんに案内されて、速やかに屋敷の中へと入る。
そこには、執事同様既に、私の到着を耳にして待ち構えるように出迎えの御方らが立っていた。
「……ラヴィ!」
「あ、アゼリア様っ!」
そこから一人、飛び出してきたのはあのアゼリア様だった。
面と向かうなり、ギュッと抱きしめられる。
「ラヴィ、ごめんなさい。ごめんなさいね?神殿を追い出すだなんて、貴女一人に辛い思いをさせてしまって」
「あ、アゼリア様っ」
「でも、貴女しか頼りになる人がいなかった。貴女に希望をかけるしかなかったのよ……本当にごめんなさい」
「は、はぁ……」
何が何やらわからず、抱きしめられっぱなしとなる。でも……私を抱きしめるアゼリア様の腕はグッと力が入って震えていた。