秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
「アゼリア、取り敢えず離してあげなさい。タンザナイト伯爵令嬢が困っているではないか」
「お父様っ、すみません」
アゼリア様の後ろで苦笑いをしているのは、なんと。ルビネスタ公爵様と並んで王室派筆頭の貴族、ガーネット公爵様ではないか。
厳かな存在に気付き慌てて、礼をする。
「が、ガーネット公爵、ご挨拶を申し上げます」
「ルビネスタからの長い旅路、疲れただろう?急に呼び立てて申し訳ない」
「い、いえ」
本当、全然大丈夫です。カードゲームに明け暮れる堕落した日々だったので……。
すると、奥の方から人の気配と足音がした。
「ガーネット公、義父上よ。その詫びは私のセリフだ。私に代わって頭を下げずとも」
そこに現れた人物にまたしても驚きだ。なんせ、この国で国王陛下の次に尊い御方なのだから。
金髪碧眼が眩しい、偉大なる御方。……エリシオン王太子殿下。
「おっ、王太子殿下!若き宝珠の輝きに、ご挨拶申し上げますっ」
「今は非公式の場だから、堅苦しい挨拶は要らない、ラヴィ」