秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
【魅了】で、甘い言葉を囁かせたのはそっちなのに、責めるだなんて何様のつもりだ。
しかし、当の本人は【魅了】と自覚しておらず、努力の結晶・好感度と主張するので、こんな安い痴話喧嘩のような発言が出てくるのだが……あぁ、タチが悪い。
苦しそうな表情を浮かべたままのアルフォード様に、ローズマリー令嬢は必死の形相で訴えかけていた。
「……そんなはずない!アルが私を裏切るはずなんて、ないわ!」
「ローズ!」
すると、ローズマリー令嬢の激情に反応するかのように、てんとう虫……赤い粒子の邪気が激しく舞い上がる。
生きたように獰猛に蠢く邪気の矛先は、アルフォード様だった。
「アル、お願い!目を覚まして!……もう一度、私に愛してるって言ってよ!」
安っぽい発言だな。……ではない!
(……いけない!)
私の胸には嫌な予感が通り過ぎた。
あの邪気が再びアルフォード様に触れたら、アルフォード様はまた【魅了】に囚われてしまう!
「アルフォード様っ……!」
身を案じて名を呼んだが……それも、杞憂だったようだ。
「こんなにも膨大な邪気が……?」