秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
でも……私はもう、逃げることはしない。
「……邪魔!あっち行って!」
「ラヴィ!」
全力疾走のまま、その中へと身を投じた。
砂嵐のように目の前に襲い掛かる赤いてんとう虫らを、両手でやみくもにブンブンと払い除ける。
指、掌や腕にぺちぺちと当たっては、次々とジュッと音を立てては消えていくてんとう虫たち。
振り回した腕だけではなく、勝手に頭や顔にもてんとう虫は当たる。その度にジュッと音を立てていて、勝手に消えていくのだ。
私は痛くも何ともないのに。
《その頭、指先から足先まで身体中に【浄化】の聖力が漲っていて、浄化の聖女が触れた部分全てに【浄化】の作用が働く》
……本当だ。
私の体、肌に直接……服で覆われている部分以外の箇所にてんとう虫、【邪気】が当たると消滅していく。
信じていなかったわけではなかったが、私の【浄化】の力は、紛れもなく本物だったのだ。
(これなら……!)
ファビオの言った方法で、大元であるローズマリー令嬢の【邪気】を浄化できるかもしれない……!
私を襲った【邪気】は大方消滅して数を減らし、私は引き続き全力疾走でその中を潜り抜ける。