秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
アルフォード様の一言で動揺し、油断したローズマリー令嬢の様子をファビオは見逃さなかった。
行ってこいと言わんばかりに、私の背中をバチン!と叩く。
私もファビオに背中を押してもらうかのように、その場を飛び出した。
向かうはローズマリー令嬢の懐、一直線。
今までにないぐらい、足をいっぱい回して全力疾走だ。
「……ラヴィ?!」
「な、何よっ!」
私の密かに火蓋が切られた突進全力疾走が、アルフォード様だけではなく、ローズマリー令嬢にも気付かれた。
アルフォード様は驚愕の表情を見せていたが、ローズマリー令嬢は私の駆け出した姿を見て、憎々しげに顔を歪ます。
「何しようとしてんのよ、ふざけんじゃないわよ!……元はと言えば、あんたが邪魔をぉぉぉっ!」
ここ一番で、ローズマリー令嬢は吠える。
彼女の感情に伴って動くのか、彼女の赤いてんとう虫……粒子の邪気が一斉にこっちへと矛先を向けた。
全力疾走中の私に、てんとう虫軍団が勢いよく襲い掛かる。
【邪気】が迫ってくる。放つ独特の不快感に、うっと吐き気を催した。気持ち悪くて、顔を背けたくなる。