秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない


こんなに頂いてしまっては、何かを返さないといけない。

その対価として、公爵様に労働を申し入れたのだが、『とんでもない!』と逆に驚かれたことにこっちも驚き、二人で驚き合うというおかしげな光景となった。

『で、ですが公爵様!神殿では労働の対価として僅かながらの給金を頂いておりました。あんな大量のドレスや貴金属類、どれだけ働けば返せるので……』

『返さんでいい!ラヴィ、おまえは仮にも伯爵令嬢だぞ!貴族令嬢は生きているだけで対価なんだよ!……あぁ、神殿なんかに住み込み見習いしたがために、神殿の貧乏根性が身に付いて、あぁ……五年前、二人が儚くなった時、やっぱりおまえだけでも引き取るべきだったよ……あぁ、伯爵令嬢が、僅かながらの給金ってなんだよ……あぁ』

最後の方は、まるであっちの世界に行ったかのように、悲し気にぶつぶつと独語していた。

神殿の貧乏根性とはなんですか、公爵様。



結局、労働は却下される。

この大きいお屋敷で、食う寝るお茶の繰り返し生活で何もすることがなく、ソワソワしていた私だったが。

『ラヴィは、一応タンザナイト伯爵令嬢なのですから、お勉強しましょうね』

と、サルビア様から、一日一回数時間程度、淑女教育を受けることになった。

確かに。私は一応貴族令嬢。だが、神殿勤めをしていたため本格的な淑女教育とは無縁だった。
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