秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
だが、それでも時間が余るため、隙間の時間はこうしていろんな人のちょっとしたお手伝いをしている。
今は庭師さんらの持ってきた花の仕分けだが、他にもメイドさんのお掃除とか物を運ぶお手伝いをしたり。
使用人の皆様には恐縮され、公爵様らには『おまえは客人だから手伝わなくていい!』と言われるが、神殿でも見習いとして掃除や雑用に明け暮れていた私にとっては、お手伝い程度の労働はなんてことなかった。
だって、タダ飯喰らいの上にご褒美だらけでは、罪悪感しかない。
……そして、本日も。公爵様らの目を盗んでは、お手伝いをしている。
働きたい貴族令嬢の私に、恐縮しない使用人もいる。
「ラヴィ、薔薇のトゲに気を付けろよ!刺さったらすぐ血が出るからなぁー」
「わかってるよ、ファビオ」
「わはははー」
庭園から採ってきた花を台車からどんどん降ろしてはこっちに持ってくるのは、庭師見習いの少年、ファビオ。
私と同じ歳の、栗色の髪が印象的な男の子。大人しかいないこのお屋敷の中で私と同年代の子は珍しく、ファビオが気さくなこともあり、仲良くさせてもらっている。
神殿にいた時に顔を合わせていた、野菜屋さんの業者の息子さんにそっくりで、勝手に親近感を持っていた。
いっつも笑ってる。