イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
***


おかげで今朝はすっかり寝不足だ。

しかし、多少のことがあっても、私は日常生活に支障が出る方ではない。
昨年、十年待ち続けたシリーズものの小説続刊の速報を聞いた時も、毎日ワクワクして舞い上がっていたけれど、仕事はいつもどおりきっちりこなした。

社会人なのだから当たり前だ。
けれど今回は……寧ろ絶好調と言ってもいい。

朝から超高速タイピングで脇目も振らず仕事をしていると、河内さんが休憩にとコーヒーを持ってきてくれた。


「ちょ。歩実さん、なんか鬼気迫る感じで怖いんですけど」
「あ、ありがとう」
「そんなに集中して、私なら後でバテバテになりそう。遊びにも行けなくなっちゃう」
「…私は遊びに行くことがないし」
「でも家事があるじゃないですか。あ、今日はお昼、どっちです?」

河内さんは、私が相槌を打つだけだったり大した返事はしなくてもポンポンと会話を投げてくれる。なので、最近は彼女となら気楽に話せるようになってきた。
ただ、たまにぴょんっと話が飛ぶので、ついていくのに数秒遅れるけれど。
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