イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
「今日は早めに寝ろよ」
「うん。あ。でも、河内さんと約束しちゃったから外で食べて帰る。郁人は?」
そういうと、今まで機嫌のよさげな表情だったのにきゅっと眉毛が寄った。
「俺は、遅くなる。寝不足であまり飲むなよ」
「大丈夫」
「帰り、俺の方が早く終われれば迎えに行く」
「えっ? いいよ、そんなの」
私だって自分の体調を見てお酒くらい調整するし、郁人にそこまでしてもらう必要はない。
そう思ったのに、郁人はもう手元のお弁当に視線を落としてアスパラベーコンを箸で摘み上げていて私の方はちらりとも見ない。聞く耳持たない様子だった。
最近、時々結婚契約書の中身をふと考えてしまう時がある。
お互いに生活に干渉しあわないこと。
男女として触れ合うことはしない。
このふたつが守られていないからだ。もちろん、それが嫌というわけじゃなくて……だけど郁人はどう考えているのかそれが気になった。