イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
普通の夫婦みたいに、触れあいたい。
身体も、心も。

契約内容の中でもこのふたつは、一番最重要事項だった。それを考え直したい、と私が思う意味を、わかって欲しい。
本当なら、こんな契約まるっとナシにしてしまいたいのだ。

一緒に住んで、夫婦の割にはそれほど多くないかもしれないけれど共有する時間を持って、少しずつわかるようになってきた郁人の表情の変化。
今もやっぱり、わかってしまった。彼の表情が、強張ったのが。

拒絶とも取れるその表情に、ずきんと胸が痛む。
けど、ここで怖気づいたら前に進めない。いや寧ろ、後退する可能性の方が高い。

「見せかけじゃなく、本当の夫婦になりたい。郁人と結婚して良かったと思ってるから」
「……夫婦でも、お互い知る必要のないことはある」
「でも本当の夫婦なら知ってて当然のことを郁人は敢えて黙ってるよね? か……家族のこととか」

……婚約者のこととか。
< 176 / 269 >

この作品をシェア

pagetop