イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活

 アクセサリーがショーケースに並ぶ一角で、手ごろな指輪を選ぶフリをして店員に声をかけサイズを測ってもらった。


 バッグからスマホを手に取り、『7号でした』と文字を打つ。送信しようとした時、嬉しそうな女性の燥いだ声が聞こえた。


「いいの? 本当に?」

「いいよ。誕生日なんだから」


声の方を見れば、カップルがふたりでショーケースの中を覗き込んでいる。その光景を見ていて、虚しさのようなものを感じた。


恋愛なら、あれが普通なんだよなあ。


いくら、お見合いだからといって、今の状況がちょっとあり得ない急展開になっていることには気が付いている。昨日の話し合いで押し切られた感は否めない。元々、誰かの意見に反論したりすることが苦手なのだ。


だけど、それだけでも、ない。

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