イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
とにかく、入籍するまでは絶対に周囲に知られたくない。その点に関しては私と彼の見解は一致している。なので上司にはそれぞれ、営業部部長には佐々木さんが、亀爺には私が見合いの結果を報告した。ふたりで行けば間違いなく目立つからだ。
すぐにでも籍を入れたいと考えている、ということは一旦伏せ置き、結婚を視野に付き合うことになったと説明すると亀爺は穏やかに笑った。
報告しながら、自分で首を傾げる。
……付き合う? のかな?
早くに籍を入れたいとしても、それまでにいくらかの期間はある。その間に私たちは付き合いらしきことをすることになるのだろうか。男女としてのふれあいは無しということで合意は得ていても、夫婦として暮らすならお互いのことをもっと知る努力は必要だろう。
定時ぴったり、今日中の業務は問題なく終わらせていたため、急いでオフィスを出る。他の女性社員は、飲みに行くだのデートだの、仕事上がりの会話を楽しんでいてそんな空気があまり得意ではなく、足早に会社を出るのはいつものことだ。
電車に乗る前に、駅の商業施設の中にあるセレクトショップに立ち寄った。