イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
郁人の秘密が衝撃すぎて、すっかりそちらの内容が頭から追い出されていた。
反応が遅れた私の腰を、郁人が抱えて持ち上げる。

「えっ? 何?」

気づいたら、膝の上にいた。

「あの項目の削除は本当にしていいのか?」

ふざけてはいない、真剣な表情で見つめられる。
だけどほんの少し脅すみたいに、思い知らせるみたいに、その大きな手が私の腰骨を柔く掴む。

「……削除じゃない。私のペースで、に変更、でしょ?」

そう言って郁人を睨むと、彼はふっと表情を和らげた。

「ああ、そうだったか。残念」

残念、って。
郁人は、本当に触れたいと思ってくれているってこと、かな。

そう思えば、ぽっとお腹の奥に疼くような熱が灯った。


< 190 / 269 >

この作品をシェア

pagetop