イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
毎日のニュースや、新聞、CMなんかに敏感になって、つい眞島商事という社名を探す癖がついてきた、という頃だった。
お昼、食事に出ていた社員がぱらぱらと戻ってきて、その中のひとりが大きな声で言った。

「眞島商事の会長が、危ないらしいぞ」

男性社員は、騒めいた。私も、はっと顔を上げてその男性社員と周囲に集まった人間の会話に耳を澄ます。親会社の状況が、この会社にどう影響するのか男性社員はやはり敏感なようだった。タブレットやスマホを出してきて、それぞれ何か情報を探し始める。

女性社員は、さほど関心はないようで「そうなんだ」程度の反応しかない。特にこの部署の女性社員は、どちらかというと結婚退職希望の人が多いから危機感があまりないのかもしれない。

「多分、結構前からあまり良くなかったんじゃないか」
「上層部の入れ替えがあるって春から言ってたもんな」
「危ないって情報が流れるってことは、多分もうダメってことだろうな」

……郁人の、お祖父さんだ。
大丈夫なのだろうか。そう言えば、郁人は叔父夫婦のことは少し話してくれたけど祖父のことは大して何も言ってなかった。
ただ、会長の具合が悪く、引退をして現社長が会長になる、と言っていただけだ。まさか、そんなに悪いなんて思わなかった。
デスクの上に置いてあったスマホに視線を落とす。郁人から、特に何も連絡は入ってない。

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