イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
おひとり様には敷居が高い。しかし彼は慣れた様子で店内へ進み、カウンターの中にいるバーテンダーに挨拶をする。綺麗な男の人だ。


「いらっしゃいませ、佐々木さん。お連れ様があるなんて珍しいですね」


どうやら、彼は常連のようだ。


「妻だ」
「えっ」


あっさりと紹介され、バーテンダーが驚いた顔をする。びっくりした声は、私とバーテンダーの両方だ。


「ご結婚されてたんですね、知りませんでした」


まさか、そんな風に紹介してくれるとは思ってもいなくて、気恥ずかしくて目を逸らす。
咄嗟に言葉が出ないのは許して欲しい、ぼっち生活が長いゆえに、会話スキルが低いのだ。
緊張でそわそわと店内を見渡しながら、郁人と並んでスツールに座った。


「奥様は何になさいますか?」
「え、あ、ちょっと待ってください」


奥様、と言われてちょっと顔が熱くなる。
何を頼めばいいのかわからず、動揺して郁人を見ると、メニューを差し出された。
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